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2003年3月後半

2003/03/16

睡眠不足と脳の活動

 昨日に引き続き、一日休養。休養といっても、音楽をずっと聴きながら、ネットジャンキーな生活をしていたので、あんまり休養っぽくはないが、ネットを適当に見て回ったり、サイトの気づいたミスを直す程度のメンテとかそんな感じ。あとは、『切り裂きジャック』P・コーンウェル 講談社 bk1/amazon)を読んだりする。

 夜、Yahoo! Newsで「蓄積する寝不足の影響 睡眠6時間以下で顕著に」なる記事を読む。要約すると、6時間以下しか寝ていないと、自覚していなくとも記憶力や情報処理の能力がどんどん劣っていくのだそうだ。1日4時間、6時間、8時間の睡眠時間のグループで比較して、6時間睡眠と4時間睡眠のグループは脳の活動能力が徐々に低下、2週間後は3日間寝ていない人と同レベルまで下がったとか。

 最近、毎日3〜4時間睡眠なのだがまずいだろうか。ただ、個人的に感じていることには、睡眠時間はたくさんとっているとたくさんとらなくてはならなくなる。少ない時間に慣れると少ない時間で十分になる傾向があると気がする。十分寝ていて、急に睡眠時間が減るとかなり辛いが、毎日睡眠時間が少ないとそれなりに慣れるのだ。そして休みなど、寝られるとなるといくらでも寝てしまい、寝たから十分に活動できるかというと単にだらだらと過ごしてしまう。それはまた別の問題か。

 今日聴いていたのは、t.A.T.u.と聴いていて、音楽の傾向が違う気がするが柴田淳を聴いている。正統派のヴォーカル系のミュージシャンという感じでよい。

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『ため息』

『ため息』  柴田淳のセカンドアルバム。透明感があり正統的な歌い方で歌うヴォーカルが美しい。作詞作曲は全曲柴田淳で、ピアノを弾くらしくピアノの弾き語り1曲とピアノソロの曲2曲を含む。

 柴田淳は、「犯人判っちゃいました」の柴田純と一文字違いなので、かなり前にあれっと思って印象に残ったのが最初で、ジャケットの写真など見ると結構美人なのでどんな歌なのだろうかと興味を持っていた。この間、このセカンドアルバムがHMVでヒットチャートの20位以内に上がっていたので、テレビの主題歌にでも使われたのかと思っていた。最近、ヒットチャートに上がるのは、テレビドラマかCMとのタイアップ曲くらいだが、どうもそうじゃないみたいだ(テレビをほとんど見ないので、違ったらすまん)。

 そんなきっかけで聴いてみたけれど、失恋の歌が多いわりに、透明感のあるヴォーカルが切なくてもジメジメしていない曲になっていて、しみじみと聴いてしまう。普段、癖のある曲ばかり聴いていて、正統派な曲はすぐに飽きる方なのだが結構好きかもしれない。

[ 『ため息』 柴田淳 amazon ]

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2003/03/17

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

 昨日の話、今の睡眠時間からすると「3日寝てない人と同じくらいの機能しかない」ことになるのだが、やる気のなさとか、夜食事したあと意識を失ったり、電車で本を読んでいても意識を失ったりしているのを思うと、そうかもなぁと思う。もっと寝よう。

 最近、『切り裂きジャック』P・コーンウェル 講談社 bk1/amazon)を読んでいるのだが、そこに切り裂きジャックの書いた「捕まえられるもんなら捕まえてごらん」という警察をからかう書簡の写真などが載っている。ディカプリオ主演とスピルバーグ監督の新作映画のタイトルが『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』だが、まさにその言葉で警察をからかっていた。いや、それだけ。オチなし。

 ということで、今日の日記はオチなしで終わるはずだったのだが(別に今日だけじゃなくて、いつもオチはない。)、そんなことを書いたときに限って、ある人の日記で「日記に落ちがあるというのもいかがなものか」と書かれていて、気になって追記。その言葉は、その人の日記に落ちがなくて、その結びの言葉であり、更新時刻もほぼ同じくらいで、こちらの日記を読んで書いたとも思わないのだけど。……すまん。これもオチなし。

 ところで、講談社ノベルスで、メフィスト賞作家による書きおろし密室本という、袋とじになったノベルスがたくさん出ている。それの袋とじ部分にある応募券を5枚送ると、『編集部ホンネ座談会』なる特製ノベルスを貰えることになっている。その締め切りが今月末なのだが、早く申し込んでいれば1月から順次発送のはずなのだが、それを貰ったとかいう話を聞かない。みんな申し込んでないのか? それとも申し込んでるのに届いてないのか? まだ送ってないので、忘れずに申し込まなくちゃ。

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2003/03/18

 以前は鞄を必ず持ち歩いていて、必須アイテムの一つとして折り畳み傘を持っていた。時には、鞄に入れているものがないはずなのにその割には重いと思ったら、折り畳み傘が二本入っていたということもあった。傘を使ったつもりで折り畳み傘を余計に放り込んだわけだ。

 しかし最近は荷物を持たずに出かけていて、今日のように不意に雨が降ると傘がなくて困る。別に不意ではなくて、天気予報を見ていれば予測できたことなのかもしれないが、テレビなどここしばらく見ていなくて、どんな形をしていたかも忘れている。「テレビ? それ食えるのか?」って感じ。

 そんなわけでコンビニでまた傘を買う。またというのは、ここのところで折り畳みを2本、長い傘を2本、計4本買っているのだ。1000円程度の傘も4本も買うと4000円だからバカにならない。しかも最近では、100円ショップでも傘を売っているらしいので、100円ショップで買ってれば40本になる。40本も傘があったら、もうそれで一生傘なんていらないんじゃないかという気がする。

 しかし、100円ショップの傘を買った人の話では、100円だけあってすぐに壊れるらしい。「いやぁ、それをひとに言ったら、何回差したんだ?って訊くんで、たった3回差しただけで壊れちゃったんだよって言ったんだけどね。そしたら、じゃあ1回33円じゃんって言われて納得しちゃった。まあいいかって。」 落語みたいな話である。

 こちら1本1000円くらいなので、30回くらい差せば納得できるんだろうか。よくわからない。とはいえ、ろくな傘がなかったので、気にせず買い続けてきたが、4本揃うともういらない。天気には要注意である。

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2003/03/19

はてなダイアリー

 最近、すでに日記を書いている人でも、はてなダイアリーを利用する人が増えている。正式公開したので余計拍車がかかっているのか。

 はてなアンテナの方は僕も利用していて、URLを登録するだけで更新情報を取得してくれる優れものアンテナだと思う。アンテナのチェック条件を共有するところがミソで、既に他の人が登録しているサイトならチェック条件も他人任せで済む。もちろん逆も真なので、自分の思いと違うチェック条件に書き換えられてしまうという欠点もある。その場合は自分でもう一度リンクし直せばいいので、手間が省ける利点の方が大きい。とにかく、設定とか難しいことを考えずにURLを入力してクリックするだけで、とりあえず更新時刻取得リンクができてしまうという簡便さはさすがだ。

 はてなダイアリーの人気の理由も日記更新の簡便さとキーワードリンク機能なのだろうと思う。しかし、はてなダイアリーの方は、簡便さはともかく、キーワードリンクが今ひとつである。確かに、日記にリンクをいかにうまくつけるかというのは日記を書くときのポイントだと思う。こまめにリンクをしておくと日記に思わぬ面白さが出てくる。最近流行のblogも更新の手軽さに加え、リンクの登録とリファラーの自動取得が流行の理由なんじゃないかと思っている。そのリンクを自動的にやってくれるし、他の人とキーワードを共有しているので他力本願かでリンクが増えていく仕掛けだ。

 しかし、実際に日記を読んでいると固有名詞だけでなく、一般名詞までキーワード化されているためにムダにリンクが多いのが鬱陶しい。それとその説明自体が他力本願で増えていく便利さの反面、やはりキーワードの分類や内容がばらつきすぎていてちょっと辛い。そんなわけで、個人的にははてなダイアリーには手を出す予定なし。愛読している日記いくつかでは、はてなダイアリー化が進んでいるけど、やっぱり普通の日記でも読ませる人ってのは、それなりに使い方を工夫している。面白い使い方をしていると、こういう機能的な不満なんか関係ない。そして、機能は改善されていくようだし。

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2003/03/20

戦争が始まった

 忙しくて世の中の動きをよく知らないうちに、戦争が始まったらしい。テレビは戦争特番に塗り変わったらしい。すべて伝聞系である。

 フレンチポテトはフリーダムポテトとかフレンチトーストはフリーダムトーストとか、置き換えられていると、つい一昨日知った。それでいうなら、浅煎り豆のコーヒーを暴力コーヒーとか、日本に繁殖しているエビの一種を暴力ザリガニと読んでみるのはどうだろうか。暴力ラプソディ。メイド・イン・暴力。ワンス・アポン・ア・タイム・イン・暴力。巴里の暴力人。レニングラード・カウボーイズ・ゴー・暴力。暴力の友人。ちょっとひねって、暴力波止場とか暴力粉とかもある。これって、言葉のアメリカ?

 最近、うたかたの日々に書いた読書感想をbk1に投稿しているのは知っての通りだが、今週も「今週のオススメ書評」に採用になり、3000円分のbk1ポイントがはいる。単行本なら2冊、文庫なら3〜4冊買えるので、ちょっとした小遣い稼ぎになって嬉しい。今回は『霊玉伝』が採用された。

 『切り裂きジャック』P・コーンウェル 講談社 bk1/amazon)を読み終えたので、この感想も書いて投稿しなくちゃ。

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『切り裂きジャック』

『切り裂きジャック』  『検屍官』シリーズのパトリシア・コーンウェルが、有名な「切り裂きジャック」の正体を明らかにするノンフィクションである。気になるのは、ずっと犯人が判らなかった100年以上も前の有名な殺人鬼の正体を、なぜ今この時期に判ったのか、本当に真犯人なのかという点である。これもいくらでもある「切り裂きジャック」研究本の一冊でしかなく、犯人を推理して終わっているだけではないのかという疑問があった。

 結論から言えば、コーンウェルは真犯人を突き止めたと言っていいのではないかと思う。「突き止めたと思っていい」という曖昧な言い回しは、この本の信憑性が低いということではない。被害者たちがどういう生活をしていて、どのように殺されたのか、とても100年以上前のこととは思えないほど詳しく書かれている。特にコーンウェルの得意とする検死結果の分析は詳しく、この時代に十分な検死が行われなかったにも関わらず、その限られた情報の中から多くのものを引き出している。そのために膨大な資料に当たったことは、訳者あとがきにあるように、調査に7億円以上の費用をかけたということからも判る。
 費用が膨大な理由のもう一つは、切り裂きジャックの残した手紙などをDNA鑑定にかけ、DNAが得られなかったための再鑑定や、さらにはミトコンドリアDNAによる再検査などを繰り返し行っているからだろう。
 これらの調査は、切り裂きジャックに対する興味本位の推理・推測ではなく、むしろ今まで現代の科学捜査のメスが入らなかった100年以上前の事件に対する再調査であり、検証といっていい。資料の再調査に加え、現代の科学捜査による裏付けを行って出た結果からは、この真犯人を今ならば検挙し裁判に持ち込めるだけの信憑性はあるといえる。

 ではなぜ曖昧な言い方でしか言えないかというと、コーンウェル自身が書いていることだが、コーンウェルの名指す真犯人のDNAが残っていないのである。切り裂きジャックの出した手紙から採取したDNAはあるのだが、真犯人と目される人物のDNAの方が手に入らないのだ。そうなると、100年以上前の殺人事件であり、限りなく状況証拠は揃っているが、それが真実と言い切ることができないのだ。被疑者はおろか、当時調査をした警官、医師、証人の一人も残っていない。切り裂きジャックの真犯人が誰だか判ったとしても、裁くこともできない。
 そして致命的なのは、状況証拠から明らかになった点からさらに証言得たり、あらたな証拠物件を得ることが不可能なのだ。コーンウェルの文章にも「かもしれない」「思われる」「はずがない」という結語が多くみられる。それが100年以上前の犯罪調査を行うことの限界なのかもしれない。誰にも真実はわからないのだ。

 コーンウェルは、そんな事件の犯人をなぜ7億円以上もかけて追求しようとしたのだろうか。それは切り裂きジャックの犯罪が、現代の猟奇的な犯罪と同じ問題を呈してるからだと思う。切り裂きジャックは、コーンウェルの書くきわめて現代的な猟奇殺人と似たような事件を起こしているのだ。警察をあざ笑いながら残酷な犯行を重ねた犯人がその罪を逃れることを許すわけにはいかない。たとえそれが100年前の事件であれ、コーンウェルは真実を明らかにしないわけにはいかなかったのだろう。既に死者となり、罪を償わせることはできなくとも、せめて真実を明らかにすることが必要だと考えたのだろう。

 『切り裂きジャック』を読み始める前には、きっといくつものデータを積み上げて犯人を徐々に絞っていき、犯人が浮き彫りになっていくような構成なのではないかと予想していた。しかし、実際には最初の章で犯人が明らかにされてしまう。そのあっけなさには気が抜けてしまったほどだ。100年前の事件を再調査していく経過をサスペンスタッチで描いて、意外な真犯人を提示する読み物にすることもできたはずだが、コーンウェルはそういう書き方をしなかったのだ。
 逆に犯人の素顔を描写しながら、切り裂きジャックが殺した人たちの周辺を含めて詳しく描写し、犯人がなぜそういう行為をとったのかという検証を重ねていく。まるで「切り裂きジャック伝」のような趣だ。あるいは別の見方をするならば、検事が様々な証拠を重ねて陪審員たちに犯人の行為を問うかのような描写といってもいい。むしろこの方が近いかもしれない。『切り裂きジャック』をこういう書き方で書いたということにも、なんとしても真相を明らかにしたいというコーンウェルの気持ちが現れているように思う。

 切り裂きジャックは、今では伝説化されミステリアスな存在、アンチヒーロー的な存在になっているように思う。コーンウェルはそれを憎むべき猟奇殺人犯として白日の下に晒そうとした。しかし死者は裁けない。静かに逃げ延びた犯人の姿が描かれているような本書の最終章には虚しさを感じざるをえなかった。

[ 『切り裂きジャック』P・コーンウェル 講談社 bk1/amazon) 2003/3/20 ]

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2003/03/21

DVD鑑賞

 休みだと思ったらいきなりばてる。DVDで映画を観たのと本を読んだ以外はネットもそれほどアクセスするわけでもなく、寝てばかりいた。

 DVD鑑賞は、『クイズ・ショウ』(監督ロバート・レッドフォード amazon)。これは劇場公開時に見逃していたもので始めて観る。面白かった。

 それから、『グレイヴディッガー』高野和明 講談社 bk1/amazon)を読み始める。こちらは『13階段』で江戸川乱歩賞をとった高野和明の受賞第一作のノンストップ・スリラー。

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2003/03/22

昼ねて夜とぶこうもりさん

 今日も昼間は寝てばかりで、夜になって活動を始める。「昼ねて夜とぶこうもりさん」という言葉を思い出す。何かというと、子どもの頃にうちにあったかるたの言葉だ。他にも「るすばんできるえらい犬」とか、なぜかいくつかの言葉だけが頭に残っている。

 DVDで『ソード・フィッシュ』(監督ドミニク・セナ amazon)を再鑑賞する。単にアクションものとして観始めたのだが、イラク攻撃しているときに観るといろいろ考えるもんだ。テロ撲滅のためには手段を選ばないという理屈が出てきて、テロ撲滅のためなら何でも許されるのかという疑問が投げかけられるわけだが、その前提となるテロ撲滅自体が正義なのか判らないとなるともう何の正当性もない。しかし、コンピュータハッキングのシーンは観れば観るほど恥ずかしい。何でこうなるかなとまた思う。

 『グレイヴディッガー』高野和明 講談社 bk1/amazon)は3分の2くらいまで読む。さくさく読めて面白いが、主人公が追われるのがスリリングというよりも荒唐無稽な感じの方が強い。面白いんだけど、これが惜しいなぁ。高野和明は警察関係に詳しいのだろうか。物語は逃げる主人公と、もうひとつの軸として警察組織側から描かれているのだが、警察組織とか公安警察の絡み合う話になっていて、こちらはなかなか面白い。

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2003/03/23

休養

 3連休の最終日。今日もほぼ休養の一日。出かけようと思っていたのだが、だんだんと億劫になってしまう。夜、出かけるが観たい映画の時間に間に合わず、CDショップや本屋をぶらついて帰ってきた。

 読書は『グレイヴディッガー』高野和明 講談社 bk1/amazon)を読了、感想をかく。溜めていた『切り裂きジャック』の感想も書いて20日のところにアップ。

 続けて、『オーガスタの聖者たち』J・マイケル・ヴェロン 角川書店 bk1/amazon)を読み始めた。帯に「ゴルフ版『フィールド・オブ・ドリームス』」とか「全米を感動で包んだ、遙かなる時代の大人の童話」とか書いてある。文芸作品というつもりで読み始めたら、意外なことに殺人犯の疑いをかけられた男の話で、主人公は法律事務所に実習生として働く若者で、ちょっとミステリ風な予感。そしたら、帯の裏側には「ジョン・グリシャムとジョン・フェインスタインを合わせたような魅力」という評もある。グリシャムの名が上がるということはやはり一種のミステリなのかと思ったが、ジョン・フェインスタインを知らないので調べてみたらゴルフに詳しいスポーツ記者らしい。
 その後読み進むにつれて殺人事件に対する展開はほとんどなく、友情的な話が進む。しかし、ゴルフも含めてスポーツには興味ないのだが、結構面白く読ませて気がつくと3分の1まで読んでいた。

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『グレイヴディッガー』

『グレイヴディッガー』  プロローグで、「第三種永久死体」という死んだときのままほぼ完全に保存された状態の死体が発見され、さらにその死体が盗まれるという事件が描かれる。そしてその謎は宙ぶらりんのまま本編は始まる。

 主人公は小悪党の八神俊彦。なぜか仏心を起こして骨髄ドナーに登録し、折しもその骨髄移植のために病院に行こうというその前日のことだった。他人に貸していた自分の部屋に戻ると、その男は死体となっていた。しかも単純な殺しではなく、煮立った風呂の中に死体は浸かっていたのだ。

 一体何が起こったのかと訝しむ八神の元に謎の男達が現れ、突然襲いかかってくる。なんとか男達から逃げ出した八神は、病院へと向かうのだった。八神が明日までに病院に辿り着かなければ、彼の骨髄を待つ患者は死ぬことになるのだ。一方、死体が見つかったことにより警察もまた八神を重要参考人として手配していた。そしてそれだけでなく、警察は同じような奇妙な変死体を続けて発見していた。どうやら謎の変死体は、甦った死者−−グレイヴディッガーが異端審問官を皆殺しにしたという伝説と同じ殺し方で殺されているようだ。

 次々と起こるグレイヴディッガーによる殺人事件の謎は? そして、警察と謎の男達から追われる八神は無事に病院にたどり着くことができるのか?

 といった話。グレイヴディッガーの謎は冒頭の死体消失とも話が繋がり、刑事警察と公安警察の捜査で謎を解いていく一方で、八神のスピーディな逃亡劇が繰り広げられる。八神の逃亡劇は次から次へと展開が速いのはいいのだが、かなりご都合主義的な展開が多く、荒唐無稽な感じがしてしまう。地道な警察の捜査によって真相が見えてくるところは面白いのだが、八神の話と警察の話が繋がり、犯人が見えてくる辺りでは、どうも事件の真相解明が消化不足という感じだ。特に最初の死体消失、グレイヴディッガーの必然性などが断然物足りない。

 終盤、山場が何度かあるのだが、いずれも荒唐無稽かご都合主義といった感じで、スピーディな点だけは認めるが、正直いってがっかりした。漫画だったら面白く読んだのかもしれないけれど、もう少しリアリティが欲しいところだ。

[ 『グレイヴディッガー』高野和明 講談社 bk1/amazon) 2003/3/23 ]

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2003/03/24

書評の★のつけ方

 何度か書いているけれど、最近よくbk1の書評コーナーに投稿している。実はそのときに困るのが、星の数である。

 何かの評価を5つ星で表すというのは、よく使うやり方で、書評だけでなくいろいろなところで使われていると思う。しかし僕はこの5つ星が嫌いだ。いや、○×がいいとか、点数表記がいいとかそういうことじゃない。そんな単純な点数で表せるものじゃないと思うからだ。
 一時期、読んだ本や観た映画の点数を100点満点でノートに付けていたときがあるが、続ければ続けるほど点数の意味が分からなくなってきた。「これはダメなんだけど好きなんだよなぁ」とか「こっちの方が点数が高いけど、点数の低いこっちの方がよかった気がする」とか自己矛盾の嵐である。
 100点満点でそんな具合なのだから、星5つとなると言わずもがなだ。そんな単純な数値化なんかできるわけがないのだ。だから自分のサイトの感想にも★評価はつけていない。

 とはいえ、書評では点数をつけることになっている。それで今どういう風に点を付けているかというと、普通に面白かったら★★★をつけて、★★★★はものすごく面白かったときにつける。★★★★★は基本はつけない。というのは、★★★★★を安易につけてしまうと、本当に面白くてこんなすごいのないぞと思ったときにマークがつけられないからだ。年に数冊しかない面白さだと思ったときに★★★★★をつけようと思っている。最近だと、『スーパー・カンヌ』が★★★★★つけようか迷った作品なのだった。結局、★★★★にとどめたのだけど。

 しかしこういうつけ方をしていると、実は点の幅がかなり狭くなってしまい、★★★と★★★★ばかりになってしまう。実際まだ★★★と★★★★しかつけたことがない。もしかしたら、もっと積極的に★★★★★をつけて、★★★★★★くらいの面白さの時には、文章の方で強調した方がよかったのかもしれない。でももうこういうルールでつけ始めてしまったので、このまま続けるつもりだ。とはいえ、すでに★★★★が増え始めていて、これくらいの面白さで★★★★もつけていいのだろうかと自分の中でよく判らなくなっている。

 なんでこんな話を書いているかというと、実は『グレイヴディッガー』に★★をつけてしまったからだ。
 ★★は、★★★★★のルールからすると、★は年に数冊のつまらなさな訳だから、★★もかなり悪いことになっとしまう。じゃあそんなにひどいのかというと、実際面白く読んだのだけど、感想に書いたような不満はやっぱりあって、どうしても★★★にならないという程度だ。やっぱり、ここでもレンジの狭さが出てしまった感じだ。かといって、★★★にしていたら、ほとんどの作品は★★★か★★★★になってしまうわけで、まあ仕方ないのかなぁ。

 などなどと悩んでしまい、やっぱり5つ星評価なんか嫌いだと思った次第。

 話はコロッと変わって、以下今日の出来事など。

 講談社密室本の応募券で貰える『編集部ホンネ座談会』特製ノベルスの申し込み締め切りがいよいよ今月一杯なので応募した。

 舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮社 bk1/amazon)を購入。舞城作品って読んだことがないのだが、最初にこれを読んでしまっていいのだろうか。アドヴァイス求む。

 漂助閉鎖。うーん、そんなことって。

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2003/03/25

訃報

 タクシーに乗っていて車内の電光掲示板式のニュースで、古尾谷雅人の自殺を知る。特にファンというわけではないけど、ちょっとショック。
 そういえば何日か前に、天本英世が亡くなったのも残念な話だった。でも天本英世は年齢的には仕方ないという気がして、ニュースを聞いてもある程度納得できていた。それに対して、古尾谷はまだ若くて、死ぬような年齢じゃない。なんて思っていたら、僕と5つしか違わないことを知り、改めてショックを受ける。

 最近聴いているのは柴田淳『ため息』で、結構気に入ってずっとステレオに入れたままにしてある。ちょっと困るのは、ステレオのCDは目覚ましになっているのだが、CDを聴きながらいつまでも心地よく眠ってしまい起きられないことである。朝かかるのが『ため息』になってから、CD一枚聴いても起きられない。

 サイト映画バカ一代より、『ユメノ銀河』DVD化を記念して、「小嶺麗奈映画祭」開催とか。昨日は泡沫の日々(3/21)で、『夢野久作の少女地獄』DVD化を知ったばかり。「泡沫の日々」からリンクされている記事によればビデ倫の規定により『火星の女』にタイトル変更らしいが、amazonでは『夢野久作の少女地獄』のままになっている。しかし、夢野久作DVD連続発売とはどうした風の吹き回しか。この勢いで、『ドグラ・マグラ』もDVD化しないかしら。

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2003/03/26

気になる展覧会

四谷シモン 「機械仕掛けの少年2」 1984年 / 徳島県立近代美術館蔵  撮影/篠山紀信  今日、電車の車内広告で偶然見かけたのだが、東京国立近代美術館で、今週金曜から開催される「今日の人形芸術―想念(おもい)の造形」という展覧会はちょっと観てみたいと思った。

 内容は、【第1部】が「昭和初期までの先駆的な作品約30点を展示し、人形芸術における近代性を紹介。また、ハンス・ベルメールの写真と作品集もあわせて出品する。」で【第2部】が「伝統的人形の世界を越えた新しい人形工芸の世界を紹介。作品点数は約70点。」とある。
 出品予定作品で興味を引いたのは、【第1部】出品予定の「竹久夢二 ≪椅子に座る男≫(昭和初期、紙・布・針金など)」と【第2部】出品予定の「四谷シモン ≪機械仕掛けの少年≫(1983年)」「大島和代 ≪2000年への旅≫(1996-99年)」「結城美栄子 ≪Tomorrow≫(1988年)」あたり。

 毎週土曜日にはギャラリートークが行われる。4月19日 (土)には「 四谷シモン+金子賢治(東京国立近代美術館工芸課長)」というのがあって興味あり。

 ふと思ったのだが、予定を立てないと観ないで終わってしまいそうなので、観に行く人を募集してみようか。興味ある人は掲示板、もしくはメールで。

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2003/03/27

最近の物欲

 夜、うどん屋に食事に行ったはずが酒を飲んでしまう。つまみも安くてリーズナブルな値段で、思わずつまみを頼んでビールを飲んで、日本酒にまで手を出して気づいたら2時間半くらい経っていた。って、一年くらい前は毎晩食事といって飲んでいたのに、こんなことは久し振り。ま、たまにはいいんじゃないか。

 『オーガスタの聖者たち』J・マイケル・ヴェロン 角川書店 bk1/amazon)を読了。非常に面白かった。

 最近の物欲は、数日前に知ったエアーエッジ フォンである。これはかなり魅力的。携帯電話としてエッジ、PC常時接続用にエアーエッジのカードと持っているが、それが一緒にできる。エアーエッジ対応のエッジは今もあるが、これはブラウザ機能も内蔵しているのだ。
 PDAにカードを差してインターネットにアクセスしたいと思っていて、新しいClieが出る度に気になっているのはその辺なのだが、エアーエッジ フォンだとブラウザ機能があるし、何よりPOPとSMTPに対応していて、単体で自分のインターネットメールボックスにアクセスできてしまう。4月1日発売、サービス開始。うーん、気になる。

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『オーガスタの聖者たち』

『オーガスタの聖者たち』  ロースクールに入学したチャールズ・ハンターは、他のロースクールの学生同様に夏休みに法律事務所で実習生として働くことになる。そこで与えられた仕事は、その事務所の共同経営者であり、アマチュア・ゴルフ界の偉大なゴルファーだった今は亡きボビー・ジョーンズの古い書類整理だった。古い書類整理から得られたのは、偉大なゴルファーの足跡ではなく、ありふれた法律資料の整理でしかないように最初は思えたが、その中から誰にも知られなかった一人の偉大なゴルファーの記録が見つかった。その幻のゴルファー、ボウレガード・ステッドマンが知られていなかったのは、彼がその才能を見せる前に殺人犯として追われたからだった。

 物語はロースクールの学生チャーリーの回想として書かれる。チャーリーが古い書類整理でステッドマンという幻のゴルファーが殺人犯として追われたこと、彼を信じたボビー・ジョーンズとの友情、そしてその結果ステッドマンの記録に残されていない偉大なスコアの数々が明らかになってくる。

 果たしてステッドマンは本当に殺人犯だったのか。ジョーンズはどうして彼を信じ助けたのか。ステッドマンは逃亡生活を続けながら、ゴルフを続け、一体どんなスコアを残したのか。殺人の話が出た時点でミステリ的な展開をするのかと思ったらそうではなく、むしろジョーンズとステッドマンの友情とゴルフ勝負の話が続く。語りが回想であるのと、語られる物語が古い書類の中に残された昔の出来事のため、派手な展開もなく抑えた文章で淡々と書かれているのだが、全然飽きさせることはない。

 話の中心はいつしかゴルフの話になるのだが、ゴルフをしたこともなければ特に興味を持ったことのない者にも面白く読ませる。もちろん、ゴルフファンには堪えられない話なのではないかと思わせる部分も多々あり、きっと自分にはそういうエピソードの魅力は100%は判らないだろうと思って残念に思った。しかしそれでも十分に面白かった。

 そして書類箱が空になる頃には、偉大なゴルファーでありながら歴史の表舞台に経つことのなかった一人の男の人生が浮かび上がる。書類箱に埋もれてた過去の話から、主人公のいる現在に話の中心は移り、殺人事件の真相を巡って法廷ものミステリのような展開になり、最後に明らかになる真実はちょっとしたドラマである。ミステリ的な要素をもっているが、しかしやはりこれは「ゴルフ小説」だ。ゴルフに興味のない者までゴルフ好きにさせてしまうくらい面白い「ゴルフ小説」だ。

 ゴルフ小説の中ではゴルフは人生なのである。だからゴルフを知らなくても面白いのかもしれない。

[ 『オーガスタの聖者たち』J・マイケル・ヴェロン 角川書店 bk1/amazon) 2003/3/27 ]

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2003/03/28

書評の鉄人

 bk1をアクセスしたら、書評の鉄人の仲間入りをしていた。
 鉄人になったときにいつも紹介文がつくのだが、どういう風に書かれているのかなぁと思ったらこうだった。

 「新鉄人誕生! 露地温さん
 露地温さんは、ミステリ・ファンタジーをはじめとする文芸書に書評を書かれている方です。的確にして具体的な指摘にはっとさせられます。深く本を読み込んでいる様子がありありとうかがえます。」

 一体どんな紹介をするのだろうか、紹介のしようがないんじゃないかと思っていたのだが、ちゃんと紹介されていた。割と素直に嬉しいなぁと思う。それと、ひとからはそういう風に見えるんだと思ったりもした。ちょっと違うのは、ミステリはよく読むけど、ファンタジーはあんまり詳しくないのである。たまたまbk1に書評を投稿を始めた頃にファンタジー系が読むことが多くて、ファンタジーに分類されるものも比較的多いかもしれない。でもまだ11件しか投稿していないのだが。

 ところで、この間、書評で★のつけかたをどうしているか書いた。★はまだ最高で4つまでしかつけていないのだが、bk1的には★をたくさんある方がきっと売れ行きもよくなるだろうし、オススメ書評が選ばれるときには書評の中身もさりながら、やはり星の数も重要なんじゃないかと思う。今回、書評の鉄人に選ばれたときに紹介された書評は『切り裂きジャック』で、これも★の数を3つにするか4つにするか迷ったのだが、厳しく3つにしておいた。そんなわけで、この書評で紹介されたのはちょっと意外だった。そういうbk1の姿勢には好感がもてる。その分、こちらも真剣に書評をアップすることにする。
 ちなみに、自分の書いているものについては、「書評」という言葉はあまり合ってなくて、あくまで「感想」だと思うのだがまあそれはいいや。

 読書は、『阿修羅ガール』舞城王太郎 新潮社 bk1/amazon)を読み始める。舞城王太郎の作品を読むのはこれが初めてで、もっと他の作品から読んだ方がいいかなぁという気もしたのだが。

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2003/03/29

エアエッジフォンと『青の炎』鑑賞

 出かけたついでに、エアーエッジ フォンをビックカメラで見てきた。4月1日発売なのに値段が出ていない。予約を受け付けているというので訊いてみると、背面液晶付きが11800円、なしが9800円だというが、「あくまで予定です」という。別の店でも訊いてみようと思ったが、近場には別の量販店はなくてビックカメラの別の店舗があったのでどうせ同じ値段だろうと思いつつ訊いてみる。すると、まだ値段は未定なのだという。見ると予約受付中の札がない。予約をしないと4月1日には買えないという話もあるが、実際の売れ行きなどを見てみないとまだ市場の反応が判らないということだろうか。
 今の本体は9月に買い換えたばかりだし、年間契約が11月1日からなので切り替え時期としては半端だ。しかしAir H"カードを解約すれば、月々いくらかずつ浮くように思える。

 『青の炎』の映画を観てくる。面白かったが、ミステリとして細かい描写に面白さがあるのだが、その辺がかなり簡潔にされているため、ミステリとしては不満が残る。「こんなに切ない殺人者がいただろうか」(不正確かもしれない)というコピーにあるように、映画では主人公の想いを重要視したということか。でも、そこもミステリ部分と裏返しになっているので、ちょっと物足りなかった。ちなみに前に書いた『青の炎』の原作の感想はこちら。映画の感想はあとでちゃんと書くか追記する予定。

 追記。Mystery Laboratoryのブログ記事「ミステリ系更新されてますリンクに登録されてないミステリ系サイト特集」に取り上げていただいた。(みすらぼさんありがとうございます。)
 みすらぼさん経由で来られた方のために書いておくと、ここがミステリ系サイトかというと、別にミステリに限っていないけど、かなりミステリの話が多いとは思う。自分の関心の範囲なので、全然ミステリィでない日々も結構続くし、ミステリファンでないと気づかないようなコネタを説明抜きで入れたりもする。(というのはミステリに限らず、他のジャンルでも同じ。コネタは気づいたひとだけにやりとして貰えばいいと思っている。)はてなダイアリーみたいに記事ごとにジャンルを付けておくと親切かもしれないけど、あんまりカテゴリを細かくしていくとうまくいかなくなるのでやる今のところやる予定はない。
 その都度やり方は変わっているのだが、今現在は、映画鑑賞と読書と音楽とその他まとまった雑談の4種類には小見出しをつけて、あと見出しなしで日常とか覚え書きとかを書くという方針である。興味あるところを拾い読みして貰うのが一番いいのではないかと思う。読書ノート、映画ノートは未整理状態のままなので、なるべく早く整理したいとは思っている。

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『青の炎』

 ストーリーとしては原作に基本的に忠実であるが、そのためかなり原作のエピソードを削ったり簡潔にしている。コピーに「こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか」とあるように、映画では主人公の想いを重要視して、ミステリ的な要素についてはあまり重きを置かなかったようだ。そのわりに、また、そのせつない殺人者が仕方なく殺人という解決策を選ばざるをえなかった状況については映画だけだとあまり感じられない。
 最後のシーンにはさすがに泣かされるのだが、それも原作を読んでいてこそであって、映画だけ観た人はもしかしたら「えっ、ここで終わり?」と思ったのではないかと思う。小説では主人公の心理がずっと描かれているので、その結末は効果的だったのだが、映画ではもう少し別の表現の仕方があったのではないかと思う。気になっていた二宮とあややのラヴシーンも、当然かもしれないけれど、なかったので、それも最後のシーンの意味も弱めることになっている。
 蜷川幸雄が監督だというので、原作と大きく変わってしまってでも、もっと主人公の心理に迫るんじゃないかと思っていたので、ちょっと意外だった。

 ミステリ映画として観るとかなり辛い。原作に忠実な分削られたエピソードで原作にあった緻密な計画やトリックの意味などの説明が省略されているので、原作のあらすじ紹介みたいになってしまっている。映画だけ観た人には、主人公の行動の意味や殺人のトリックなどで、「なんでそうなるのかわからない」というような疑問がたくさん残りそうだった。
 その上で、ちょっとしたミスから犯行がバレていく謎解き部分のプロセスなどの細かい説明は台詞で使われたりしているので、なんとなく「ネタバレありの紹介」みたいな気がしてしまった。ここまで原作に忠実でなければ、映画のあとで小説を読んでも、映画では描かれなかった細部を楽しむことができるのだが、その興味をもそいでしまっているように思う。

 というわけで、原作に忠実なのが非常に裏目にでてしまった映画だったと思う。映画自体とは関係ないが、台詞で「クストリッツァの映画」「トム・ウェイツの声」っていう言葉が出てきたことにちょっと反応。

[ 『青の炎』 監督蜷川幸雄 テアトルダイヤ 2003/03/29 ]

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2003/03/30

拍手と口笛が鳴る映画

 音楽好きの友人とシネセゾン渋谷に『24アワー・パーティ・ピープル』を観に行く。「伝説のマンチェスター・ムーヴメントを創った男たちの栄光と挫折、<何かの始まり>のエネルギーを描いた青春映画。」
 16時20分の回だったが、結構それなりに混んでいて、映画が映画だけに、外国人とかバンドやっているらしき人たち(ギターなどを持っていた)が多かった。映画のあとには珍しく拍手と口笛が鳴る。
 映画自体なかなか面白かったので、もう少し詳しくこの時代のことを知りたいと思って、映画の語り役を果たす、トニー・ウィルソンの書いた原作本『24アワー・パーティ・ピープル』(ソニー・マガジンズ
 bk1/amazon)を買ってしまう。
 追記。サントラも購入しちゃったよ。

 映画のあと、インターネット喫茶、漫画喫茶の類に入ったことがないので、1時間ほど行ってみる。前に「今のインターネット喫茶は何でもあって、もうそこで暮らせるくらいだ、一人くらいならインターネット喫茶で暮らした方がいい生活ができる」などという半ば本気の冗談を聞いていたのでどんなところかと思っていた。カウンターの受付などはカラオケみたいなシステムで一人一人の席がある程度個室的な空間になっていてふうーんと思う。喫茶店で500円のコーヒーで1時間過ごすのなら、ここで1時間の方がパソコンはあるし、漫画もあるし時間つぶしになるなぁと思う。会話するところではないかもしれないが。

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『24アワー・パーティ・ピープル』

『24アワー・パーティ・ピープル』  「伝説のマンチェスター・ムーヴメントを創った男たちの栄光と挫折、<何かの始まり>のエネルギーを描いた青春映画。」というのが、この映画につけられたコピーだ。その通り、誰かが主人公というより、確かにこの時代そのもの、コピーの言葉でいうなら「<何かの始まり>のエネルギー」がこの映画の主役という感じがした。

 1970年代後半から、イギリスのマンチェスターを中心にした音楽の一つの流れを裏話を交えて、セミ・ドキュメンタリー風に撮られた映画だ。テレビ局に勤めるトニー・ウィルソンは、セックス・ピストルズのデビューライヴで「歴史を観た」と思い、その後インディーズのレコード会社「ファクトリー」を作る。そこで生まれたニューオーダー、ハッピーマンデーズというバンド、そしてハシエンダというクラブは、一世を風靡するが、それらはすべて一夜の夢のように消えていく。

 僕自身は、ニューオーダーもハッピーマンデーズも聴いてなくて、映画の中で流れた曲はほとんど知らない曲だった。たぶん知っていたらもっと面白かったのだろうが、全く知らなくてもあまりにパワフルで乱暴で無茶苦茶な世界に圧倒され、ものすごく面白かった。映像も、部分的には過去のフィルムも交えたりして、当時を再現したり、突然トニー・ウィルソン役の役者が、観客に向かってしゃべり出したりもする。音楽とクラブの裏では薬が切り離せないもので、その幻覚シーンなども混じったりして、とにかく混沌としているがそれもまたこの時代と音楽の雰囲気を伝えるうまい語り口だ。
 映画が終わったあとに、拍手と口笛が鳴ったというのも、それもよく判る。それくらい、楽しくそして<奴ら>すごいねと感嘆する映画だったのだ。

 原作として、『24アワー・パーティ・ピープル』トニー・ウィルソン ソニー・マガジンズ
 bk1/amazon)という同タイトルの本があるが、トニー・ウィルソンはこの映画ではコンサルタントとして参加していて、公式サイトのプロダクションノートによれば、企画自体はマイケル・ウィンターボトム監督とプロデューサーのアンドリュー・イートンが立てたようだ。この本でも読んでからもう一度観てみたいと思った。

[ 『24アワー・パーティ・ピープル』 監督マイケル・ウィンターボトム シネセゾン渋谷 2003/03/30 ]

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2003/03/31

眠るには忙しすぎる

 春眠、暁を覚えず。いくら寝ても寝たりない。元々睡眠時間が短いのはあるが、ここ数日、少しは余分に寝てもまだ眠い。しかし、ゆっくり眠るには忙しすぎる。睡眠時間確保のため、多少更新をさぼろうかと思っている。

 今日の読書は『阿修羅ガール』舞城王太郎 新潮社 bk1/amazon)で、ほぼ残り半分を一気読みして、読了。

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『阿修羅ガール』

『阿修羅ガール』  今時の女子高生アイコの一人称で、同級生の佐野とホテルでエッチしたあと、自己嫌悪している話が物語の始まりだ。翌日学校に行ってみると、アイコは同級生たちに便所に呼び出されてシメられる。理由もわからずやられる前にやっちまえとばかり、シメの女王マキをいきなりぼかすかやってしまうが、立場は逆転するどころか逆に悪くなる。なぜなら、佐野が誘拐され、切り取られた足の指が送りつけられていたのだ。佐野と最後に会っていたアイコが何かを知っているかという単純な疑問から、みんなの視線は「何かやったんじゃないか」という疑いの視線へと変わったのだ。

 そんな風に始まった物語は、佐野の誘拐に加え、グルグル魔人なる猟奇殺人犯の話や、2チャンネル風の掲示板《天の声》を背景に起こる襲撃事件などを交えて、語り口は変わっているがミステリとしての発端が見えてくる。と、そこで第二部に変わるのだが、第一部の事件の発端をそのままに夢の話のようなものが延々と続く。これは単独で読むと面白いのだが果たして一つの小説として見た場合どうなのだろうかという疑問が残る。ちょっとした挿入話ではなくて、第一部と同じくらいの分量が延々と続くからだ。第二部の特に「森」を読んでいる間思っていたのは、これが最後に第一部ときっちり融合して小説として成り立つのかどうかという疑問だった。それができないのなら、この話は別の単独の短編小説として持ってくるべきなんじゃないかとずっと思っていた。

 果たして、第三部で、それらをすべてまとめて完結するのだが、これが成功していたのかというと今ひとつ疑問が残る。こういうミステリもまたありだとは思うのだが、かなり歪な作品だ。起こった事件がすべて解決してミステリは成立すると思うのだが、そういう意味ではミステリとして成立していないのだ。『阿修羅ガール』は三部構成だが、これ全体が第一部でしかないように思える。『続・阿修羅ガール』なり『阿修羅ガール2』で、提示された事件に結末をつけない限りミステリと呼べないんじゃないか。それならば、敢えてミステリという枠組みに収めるのではなく、ミステリの体裁をとった青春小説として捉えてみたらどうたろう。それはそれで面白いのだが、どうもそれだけでは満足できない。何が足りないのか、まだうまく整理できていないのだが、満足できない。ただ、最後まで退屈せずに読ませる小説ではあったのは確かなのだが。

[ 『阿修羅ガール』舞城王太郎 新潮社 bk1/amazon) 2003/3/31 ]

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2003/04/01

エイプリル・フール

 エイプリル・フールなので、あちこちのサイトで嘘の更新をしていたのだが、そういう遊びをする余裕がないまま日付が変わる。日記の日付は4月1日でも、もう2日の午前4時半だ。いくらなんでも遅すぎる。

 いろいろなサイトの嘘はチェックした。今年もヤフーは気合いが入っている。周りでは、PCうおっちケッタイうおっちとか人気だった。
 ただ、携帯電話といえば、こっちが嘘じゃなくてホントなのが笑える。特に2/2の電話のかけ方とか。しかし、現実の製品ではこうなってる
 再び嘘に戻り、クリエファンにはこんなのもちょっと嬉しい。紹介したリンク先はいつまでネタを残しているかわからないけど、2日になっても残っているので、しばらく大丈夫かも。

 買って読む暇がなかった『blue』魚喃キリコ マガジンハウス bk1/amazon)を読む。

 bk1とamazonで買った『24アワー・パーティ・ピープル』トニー・ウィルソン ソニー・マガジンズ
 bk1/amazon)と『24アワー・パーティ・ピープル』サントラは早速届いた。本はともかく、サントラは即B.G.M.にする。

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